「日蓮主義運動の交雑物一考」顕彰・讃仰の熱気が〝作為的な歪みと制作者〟を見過ごした
廃仏毀釈によって引き裂かれた神と仏。その縁を結ぶべく構想された模造遺物がある。ここでは日蓮聖人伊勢神天奏の井戸と大正天皇即位御大典の折の奉献曼荼羅、伝宣化出土日持上人遺物の3点をとりあげます。明治から戦前までのこれら遺物の関連事項を概観しますと、これら遺物は互いに関連があることが分かってきました。それは王道楽土出現の冥契を示し、大陸政策の見えない未来を照らす大陸雄飛の夢へ誘いました。彼の時代の人々とってはそれらは「あって欲しい遺物たち」「あるべき遺物」であったと思います。しかし、それはあまりにも一面的な内部の領解にしか過ぎません。明治新政府の描く天皇像や国策への接近を構想した遺物。それは国家非常時に生み出され、識者・賢者の目さえも塞ぎ〝国家存亡の危機に際し日本は世界に雄飛する時を迎えている〟とする日蓮主義的国体論のカイロスが、残念ながら然るべくして、応答する。〝歴史の屈折点に置かれた虚像を映す恐るべきカーブミラー〟。時流に乗じ軽率な動機で映しこまれた虚像が誘う夢。事績顕彰からやがて遺物偽造へ、もはや真実を語る役割から完全に乖離した行為は顕彰でも信仰でも宗教でもない。そうした行為を生んだ歪み、その生成過程を追った典拠資料の時系列集成です。下記の項目文字をクリックするとそれぞれPDFへリンクします。